東京高等裁判所 昭和31年(う)175号 判決
被告人 藤尾義次
〔抄 録〕
原判決は法令の適用につき刑法第二三五条、第二四三条、第四三条前段、第六八条第三号、第五六条、第五七条の順序に法条を羅列しているので、この排列の順序だけから見ると、一見未遂減軽をした後に再犯の加重をした如くに見えるのである。けれども刑の加重減軽の順序を定める同法第七二条を殊更引用しているところから考えると、原判決はこれに従つて再犯加重をした後に未遂減軽をした刑期範囲内において量刑処断したものと認めるのを相当とするので、原判決には所論のような法令適用の誤の存するものとは解せられない。しかし、なお若し原判決が所論のように未遂減軽をした後に再犯加重をしたものと解すれば、これは勿論刑法第七二条に定める刑の加重減軽の順序に違反する法令適用の誤の存するものとなるのであるが、しかし乍ら刑法第二三五条所定の刑期は一〇年以下の懲役であるから、この場合は再犯加重してから減軽した刑も、減軽してから再犯加重した刑も何れも一〇年以下であつて、何れにしてもこの一〇年以下の範囲内で処断されるのであるから、右法令適用の誤は結局判決に影響を及ぼさないものと解すべきものである。要するに論旨は理由のないものである。
(久礼田 武田 石井文)